◆当日のレジュメから
Ⅰ.業種別職種別ユニオンとは何か
1 業種別職種別ユニオンの3つの特質
「発展モデル」(理想型)であり、選別のモデルではない。
(1)業種――業種を軸に労働者の結集をはかる
①業種単位の個人加盟組織
既存の企業別組合の集合体(産業別・業種別)=企業単位に労働者を結集して業種に。
企業単位もグループとしてつくる(決定権を持たない)。
(2)職種――職種を貸金や雇用など処遇の基準にする
◇職種別賃金を将来方向としてめざす。
「横断賃率論」の実現可能性の時代
◇労働市場の規制
優先雇用協定や労働者供給事業の活用
(3)業界――業界を相手にした団体交渉をめざし、労働協約を確定する。
①労働組合の機能である「集合取引」
労働力商品の銘柄(職種)ごとに同じ値札労働協約を確定する(職種別賃金)をつける=「共通規則」
労働力商品のバーゲンセール(労働者間競争)をなくすため、まとめ売りをする=「集合取引」
②個別的労使関係→集団的労使関係(複数企業)→業種別労使関係の構築をめざす
③業界の健全化をめざし、業界に働きかけると共に、政府への政策闘争展開する
2 業種別職種別ユニオン「運動」
(1)「業種別職種別運動」での連携・共同
①産業別業種別の企業別組合の集合体
②地域基盤の労働組合の業種別部会
(2)業種別職種別運動
①業界の規制・健全化
②政府への産業政策闘争
Ⅱ.業種別職種別ユニオンが担う課題
1 日本労働運動の再生
(1)民間労働運動の暗転
◇⇒1975年
➡図1 半日以上労働争議の労働損失日数と組織率の推移
(2)官公部門の労働運動の後退
①1980年代半ば――官公労
②2000年代――公務員組合
➡図2 適用法規別組合員数の推移
(3)たたかうナショナル・センターの後退
➡図3 加盟団体別労働組合員数の推移
(4)労働組合衰退の根本的要因
◇既存労働組合の路線
大幅賃上げ路線と企業別組合の墨守
◇未組織労働者の組織化戦略の欠如
2 新しい生活と雇用システムの構築
(1)年功貸金システムの破綻と職種別賃金
①年功賃金の生活困窮メカニズムへの転化
《1》春闘の欠陥
・「共通規則」≠年功賃金+「集合取引」≠企業別組合
・二つの条件:企業別組合の力量と労働力不足→崩壊
➡図4 雇用状況の推移
《2》年功賃金の3つの特質
◇決定基準(属人)――同一労働同一賃金の実現不可能
◇賃金水準:単身者賃金(初任給)から世帯主賃金
◇上がり方:年齢別上昇カーブ
②貧困化
《1》ベアゼロ・定昇ストップ
若者=単身者賃金で固定
《2》非正社員の増大
非正社員賃金=最低賃金制の水準に連動
最低賃金額:民間の低賃金(初任給水準)に規定
➡図5 給与と初任給の推移
(2)代替システムのユニオンよる構築
①日本的雇用慣行からユニオンによるシステムの構築
1.職種別賃金
2.職種別労働市場
3.福祉国家
ジョブ型賃金+産業別組合
➡図6 雇用者報酬の推移の国際比較
②賃金制度のイメージ
1.業種別職種別ユニオンのよる職種別賃金の実現
2.職歴により昇給する職種別賃金
3.職種別賃金運動と最低賃金制運動との結合
➡図7 将来の賃金システムのイメージ図
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Ⅲ.業種別ユニオンの客観的条件と主体的条件
1 客観的条件:非年功的労働者の登場と貧困化
――労働者類型の変化と労働組合の形態転換――
◇日本特有の移行形態
(1)時代の転換:属人的処遇の枠内での移行
今日の労働社会の変動
<第四象限> ⇒ <第三象限>
➡図8 労働社会の区分のイメージ図
➡図9 属人的処遇の2類型のイメージ図
(2)今日の労働者類型
❶年功的正社員の残余的存在:第四象限
❷非年功型正社員〈上層〉:成果主義・常時リストラのもとの大企業労働者
❸非年功型正社員〈下層〉:非昇進昇給の正社員〈ポスト給〉、「ブラック企業」
❹非正社員
(3)業種別職種別ユニオンの基盤と役割
①ユニオンの基盤
1、2000年代以降はじまった第四象限から第三象限への移行、その第三象限の❸と❹
2.これまでの第三象限だった建設運輸、社会的サービスなどの専門職労働者
②ユニオンの使命
◇貧困と過酷な労働、雇用不安は、第三象限に居続けることで生じている。
◇業種別職種別ユニオンに結集し、ジョブ型労働改革を進める。
・ユニオンの実力によって第三象限を脱出し(Exodus)、第二象限へ向かう⇒時代の大転換
非年功的労働者からジョブ型労働者に転化させる。
◇さらに第二象限から第一象限へ向かう(福祉国家)
2 主体的条件:反貧困運動の再出発と活動家集団の萌芽
(1)「敗北的中断」の克服
◇2006年からの新しい労働運動と第一次反貧困運動
派遣切り一反貧困運動=対改府運動とイベント主義
民主党政権の自壊と時代閉塞状況への回帰
◇第二次反貧困運動の開始
・貧困の克服はユニオニズムしかないとの歴史の王道に
・労働相談・生活相談→個別紛争→紛争の解決→終息
★ユニオンへの結集 ⇒ 業種別結集へ
(2)「外部構築」をめざす活動家集団
①形態転換の背景――貧困化
◆形態転換は活動家集団の手によって実現された
◆反貧困の「ニュー・ユニオニズム」(new unionism)
・1889年:ロンドン/ドックの大ストライキ
・新労働組合運動/ニュー・ユニオニスト
◇「旧」と「新」との論争
「『新』と『旧』との真の違いは、この国から貧困を一掃することがユニオニストの仕事だということを、われわれは認識しているが、『旧』は認識していないというところにある」
②形態転換を担う活動家集団
<ユニオニスト・老エンゲルスのねたみ>
◇「イースト・エンドの目ざめこそ、この世紀末最大の、最も実りゆたかなできごとの一つ」であった。「私は命あってそれに出あったことを誇らしく、またうれしく思う。マルクスが生きて、これを目にすることができたなら!」
◇「ドック・ストライキでのあなたの活動がうらやましい」。「私は、この活動にくわわることのできる人たちを再度うらやむ」
(3)「業種別職種別ユニオン運動」研究会→ユニオン結成をめざす活動家集団を理論研究面で支援
◇1897(明治30)年:労働組合期成会(機関紙「労働者の世界」、遊説、結成支援)
←アメリカ帰りの労働者=職工義勇会
・高野房太郎:アメリカでAFLのオルグ資格
・期成会を母体に3つの職種別ユニオンを結成
鉄工組合(機械工)、日鉄矯正会(機関方、火夫)、活版工組合
◇衰退(治安警察法)
→「暗い谷間の時代」→1920年代:産業別組合の可能性・衰退→戦中:産業報国会
→戦後:企業別組合
◇「業種別職種別ユニオン運動研究会」
・労働組合期成から120年をへてつくられた、職種別ユニオンの結成を期成する研究会
・期成:「ある物事を必ず成就させようと誓うこと」(広辞苑)
(注)➡図版は下記を参照してください。 |