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(「音楽人通信」2001年3月号)

あれから六年……。

 万、止むを得ず、辛い宣告をしなければならない時が、この人生には何度かある。病気や老齢がからむ場合は、どんな人にも必ずある。これは、仕方ない、といって諦めてもらうしかない。事故や事件もほぼ同様。結局は、本人か家族かに、告げるしかない。
 そんなに深刻ではないと思われる、仕事にかかわる事が、大変なのだ。職場を失う、収入が途絶え、生活がなりたたなくなる。或いはもっと軽く、立場が悪くなる、つまらぬ仕事に追われるようになる、という事態は、軽く見える。しかし、いやだからというべきか、納得することが難しい。諦めがつかない。
 しかし、いかんともなく難しい事態というのは、ままあり得るのだ。その時、心を鬼にして、宣告をしきらなければならない。それが告げる人の使命なのだ。結局おくれるだけ、相手の損害が大きくなる。
 もちろん不当な解雇、解散やリストラには断固立ち向かわねばならない。それは言うまでもないのだが、実際に仕事が立ち行かなくなることは、充分ありうるのだ。
 そのときには、素早く告知して、早く立ち直る機会を与え、未練がましくさせず、新たな旅立ちを準備しなければならない。発想を変えて全く別な方途を見出すことは充分可能なのだ。この人間の世が続く限り、人間として鍛え、積み重ねた修練が役に立たなくなることはない。
 まさに音楽が私たちに人の安らぎを与える、かけがえのない救いだったと教えたのが阪神大震災のときだった。いつも唇に歌を、そして心に太陽を、だ。