| 目次 | フレーム目次 |印刷用PDFへ |

「全労連新聞」2001年3月

パートの権利

――フランスの場合

 フランス政府が、芸能産業の経営者に、雇用者としての責任を明示するガイドを、たまたま見る機会があった。文化=芸能を大切にする姿勢は、さすがと思わせるものがあったが、それよりも、非常勤やフリーの労働者、芸能人の保護についてのキメ細かさに、驚いた。
 まず、使用従属関係になく、なおかつ自ら独立事業者として登録していなければ、すべて賃金労働者としてみなされる。この推定は、双方が合意した契約書にどのような法的整合性があろうとも、貫かれる、と書いてある。やれ、請負だ、委任契約だ、などと言う言い逃れは許されないのだ。
 したがって、どんなに短期間の、或いは勤務日や時間がとびとびの技術スタッフや出演者も、期限のない労働者、日本でいう正社員労働者が受ける社会保障は、すべて保証される。健保、労災、失業保険、老齢年金などすぐ想像できるものは当然として、日本では企業単位でなければ無理と思われるような、家族手当から付加退職金、寡婦(夫)年金、住宅補助手当、更には有給休暇基金や高度専門職能育成休暇基金というのまで、公的制度として存在し、半分以上の項目は、使用者だけが保険金を納入する。それ以外は労使双方負担。
 この背景には、産別労働協約があって、この分野の一般拡張協約や業種別協約がずらりと紹介され、遵守義務が強調されている。
 私たちのやるべき事は、まだ山ほどあるな、と感心したりガッカリしたりしている。

佐藤一晴 追悼・遺稿集刊行委員会編「一晴の夢、歩んだ世界」(2002年11月16日発行)所収
初出:全日本労働組合総連合(全労連)機関紙『全労連新聞』2001年3月号