◇NEWS:新着情報(下線のついた年月日をクリックして、当該記事へ)
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◆更新(2020.07.16) ◇関西生コン・武委員長から、自筆の手紙が届く これからという時、弾圧です。過去の歴史もそうです。今回の弾圧で組織は大打撃を受けましたが、敵の内部矛盾は 拡大しています。数年の間に再建の見通しも立っています。安心下さい。(2020年7月16日) 武 建一 ◆更新(2020.07.16) ◇「ドキュメンタリー映画 棘 ――埼玉上映会」(2020年8月1日[土])にご参加を。 関西生コンクリート労組を率い 財界を恐怖に叩き込んだ伝説の男 武健一 監督 杉浦弘子 ▽13:30~(開場 13:00) ◆更新(2020.06.07) ◇関西生コンの武委員長のメッセージ 2020年6月06日に「大椿ゆうこさんのインタビュー」から。 https://twitter.com/ohtsubakiyuko 「他人の痛みは、わが痛み」と運動している関西生コンの武委員長が、全国の仲間に激励の呼びかけ。 >まとな労働組合の広がりを阻止するには、成果を上げている関生に打撃を与えること、この権力の意図は御用組合 的な労働組合しか認めないことをめざしているが、私たちは「あきらめないこと」とメッセージ。 ◆更新(2019.02.05) 『労働法律旬報』に掲載! ◇『労働法律旬報』(2018年2018年11月上旬号、1923号、発行日 2018年11月10日、2018年11月下旬号、1924号、発行日 2018年11月25日、旬報社、本体2,000円+税)誌に掲載された「生コン関連業種別ユニオン連続講座」の第1回目(2018年8月25日(土)午後13時~17時、都内:連合会館にて開催)全文が本サイトで読めるようになりました。 ◆(2019.02.05)
◇更新(2019.02.05) まっとうな労働運動に加えられている資本による攻撃と「共謀罪 のリハーサル」ともいえる国家権力による弾圧の本質を明らかにする! (内容紹介は、写真をクリックしてください) 連帯ユニオン 編、小谷野 毅、葛西映子、安田浩一、里見和夫 永嶋靖久共著 旬報社、定価 本体1,200円+税 、2019年01月30日 ◆(2019.02.05)
2018年11月22日 (2018年7月11日)
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◆〔木下武男研究会代表が「分析・解明」してきた事実] 関西生コン支部の教訓と「本当の労働組合」 3 業種別職種別ユニオン運動の広がる基盤と可能性 ウェッブ夫妻は 『産業民主制論』(一八九七年)で競争規制の方法を定式化しています。このことと関西生コン支部の歴史的教訓とを突き合わせて述べていくことにします。教訓は四つにまとめましたが、前半の二つは競争規制の方法と結びついています。 ●教訓❶業種別職種別賃金――「共通規則」にもとづく労働力商品の販売 ウェッブは「労働条件を個人取引によらず、ある共通規制(コモン・ルール)によって決定」するようにしなければならない。「個人取引」―「共通規則」―「集合取引」、この三つが競争規制のキーワードです。 イラストが「個人取引」のイメージです。ある労働者が「私は時給一五〇〇円でなければ働かない」といい、別の労働者が「私は六〇〇円でいい」といった場合、雇用主は「じゃあ六〇〇円で雇用する」となるのは当然のことです。ここに競争が成立し、労働者の労働条件が悪くなっていきます。これが「個人取引」です。労働力商品のバーゲンセールが展開され、値段は止めどもなく下がっていきます。そうではなく労働組合が決めた値段で売りなさい、買いなさいというその基準が「共通規則」です。「共通規則」を設定することで労働者相互の競争は規制することができます。 関西生コン支部の「教訓❶業種別職種別賃金」が「共通規則」に相当します。関西生コンは一九七三年の春闘で大型運転手を集団交渉の参加企業とのあいだの労働協約で確認しました。さらに一九八二年には「業種別・職種別賃金体系」を労使で確認し、職種別賃金を明確にしました。これは「共通規則」 のとおりに賃金を支払いなさいということであり、日本では画期的なことでした。 日本の年功賃金は「本当の労働組合」の視点からすると「共通規則」を設定できないことに致命的な欠陥があります。年功賃金は企業内の賃金であり、企業を超えることができません。これまで年功賃金で生活が良くなったとかのレベルではなく、マルクスとエンゲルスが指摘した労働者間の競争を規制することができない。このことが問題なのです。年功賃金の構成要素である年齢や勤続、性差、個人の能力などを基準にして企業横断的な「共通規則」をつくつて競争を規制するなどできるわけがありません。年功賃金が支配的なこの日本で、職種別賃金を設定したところに関西生コン支部の最大の歴史的教訓があるとみるべきでしょう。 ●教訓❷集団交渉――産業別交渉で「共通規則」を実現 「集合取引」(コレクティブ・バーゲーニング)は、今日では団体交渉と訳されていますが、「集合取引」の方が労働組合の根本を表していると思います。労働力商品をまとめた (コレクティブな)状態にする。これはイラストの下の長方形です。労働組合が労働者を組織して、労働力商品を「個人取引」 でバラバラに売ることができなくします。そして経営者団体にたいしてまとめた状態にして取引(バーゲーニング)する。これが「集合取引」です。 この産業別交渉という難事業に挑んだのが関西生コン支部でした。一九七三年、一四社を相手にした初の集団交渉が実現しました。重要なのは経営者は自然に集団交渉に応じたわけではなく、支部が強烈な産業別闘争を展開して、個別企業を追い込んだから実現したということです。集団交渉への参加を明確にしない企業に対しては指名ストや、時限スト、波状スト、統一ストと闘争を拡大していきました。 年功賃金は「共通規則」を実現できない。企業別労働組合は「集合取引」を実現できない。この理解が「本当の労働組合」を知る上で大切です。戟後労働運動のなかで企業別組合を前提にして集団交渉や続一交渉などで企業の枠を超える努力はなされました。しかし、関西生コン支部のようにジョブ型賃金と産業別交渉の二つの柱を打ち立てたところはありません。支部が実現した「集団交渉方式」は、日本でも意識的に追求すれば産業別交渉は不可能ではないという大きな歴史的教訓です。 ●教訓❸企業の枠をこえた「統一的指導機関」――産業別組合の末端組織 関西生コン支部の組織的な特徴として、見逃してはならないのは、指導機関のつくられ方です。関西生コン支部は欧米の産業別労働組合・一般労働組合と同じ構造になっています。労働組合の権限をもっている最基底の組織は企業にはありません。これが組織論で重要なところです。 企業の組合組織には権限はなく、その上の産業別の地域組織に執行権や財政権、人事権などの権限が置かれています。イギリスでは「ブランチ」、フランスでは「サンディカ」、アメリカでは「ローカルユニオン」と呼ばれています。労働者は企業の組織ではなく、その産業別地域組織に個人加盟します。 これが重要なところです。日本にも個人加盟の労働組合はありますが、問題は組合権限がどこにあるかです。企業支部や分会に権限を与えるならば、個人加盟組織であっても実質的には企業別組合になってしまいます。企業分散的な組織になるのはさけられません。 関西生コン支部の組織で重要な教訓だと思ったのは、結成当初から支部を「統一的指導機関」と位置づけていたことです。産業別労働組合型の産業別地域組織をつくっていたことになります。この「企業を超えた統一司令部」をつくつたことが、集団交渉をやり抜く組織的保障となったわけです。強力な産業別続一闘争は、企業を超えた指導体制がなければリードできません。 ●教訓❹労働組合主導型の事業協同組合 この教訓は欧米の労働組合運動とは別のものです。欧米は重層的下請け構造や系列下請け構造などは基本的には存在しません。これは公正な商取引や産業別労働協約が成立しているからです。だから日本の運動の特殊性です。 日本資本主義は独特のものです。私は建設産業の労働協約の調査にフランスとイギリスにいったことがありますが、下請け構造に興味があり、聞いてみました。やはり日本的な下請け構造はないと言って良いと思いました。なぜかというと、産業別労働組合があるからです。労働協約は建設産業の職種別の労働者の全体に適用されます。大企業は協約賃金に上乗せ分がありますが、中小零細企業で日本ほどの大きな開きはない。だから労働コストの収奪という形での下請け構造はできにくいのです。 このような日本の構造のもとで労働者の賃金・労働条件を確保するには、どうすれば良いのか。いま、武委員長が述べられた通り、中小業者を事業協同組合という形で結束させ、労働者を収奪する方向ではなく、元請け業者や背景資本、大企業に矛先を向けていくことです。生コン業界では大手セメントメーカーとゼネコンです。 ここで興味深いことを紹介しましょう。一九八一年、当時の日経連の大槻文平会長(三菱鉱業セメント会長)は「関西生コンの運動は、資本主義の根幹にかかわるような運動をしている」、「生コン支部の運動は箱根の山を越えさせない」といいました。これはおかしいと思いました。関西生コン支部がやっている運動は、フランスやドイツやイギリスなどヨーロッパでは当たり前のことなのです。そこの資本主義の根幹がゆらいでいるわけがない。ところがよくよく考えてみると、これを「日本資本主義」の根幹に関わるものだととらえるならばまさしくそうです。 日本的な収奪構造の中で事業協同組合を作り、大資本に向かっていく。こんなことをやられたらたまらん、というのが大槻文平の真意だったのではないかと思います。労働組合主導型の事業協同組合を作って大資本に立ち向かう。これが教訓の四です。 ◇出所:《建設独占を揺がした139日―関西生コン労組のストライキが切り開いた地平 : 労働運動の現段階と業種別・職種別運動、木下武男、2011年4月、木下武男、丸山茂樹、変革のアソシエ》 労働組合の可能性 貧困=格差を乗り越える労働運動 〔武建一委員長が「解明」してきた事実] ―関西生コン支部とたたかいの40年、『世界』(岩波書店、2008年1月号) 本文はPDFへ。 関西生コン労働組合運動の歴史と到達点――業種別支部型労働組合運動が切り開いたもの (新しい労働組合運動の模索―2―他人の痛みはわが痛み) 武 建一、「賃金と社会保障」 847号、 p8―23、 1982年08月10日 本文はPDFへ。 |
2018.08.25研究会当日 ◆研究会の講演・レジュメ 関西生コン55年の到達点から見た今 ◆武建一関西生コン支部委員長 1942年 1月20日 徳之島に生まれ 現在 全日本建設運輸連帯労働組合関西生コン支部委員長 ◆「茨の道を踏み越えて――志ある者達を救い出そう」(出版 KU会) https://www.kannama.com/danatutokusyu/ibaranomiti.htm |
◆当日のレジュメから これまで東京ではじっくり委員長の話を聞く機会がありませんでした。また若者組合員も多いので、基本的なことを含めてお話し下さい。(木下武男) Ⅰ 生コン業界の構造と労働者の状態 (基礎的なことですが) ◇生コンの製品と運輸 ◇中小企業が多い業界・下請構造 ◇セメントメーカーとゼネコンの狭間の業界構造 Ⅱ.関生方式が確立した4つの柱 柱ごとの歴史について、さらに現状の到達点についてもここでお願いします。 1.「統一的指導機関」の確立 結成の時期に支部の「企業の枠をこえた業種別統一司令部」を確立しました。集団交渉を実現する以前に、産業別統一闘争の組織体制をつくったことは大事だと思います。 ◇何故できたのかをお聞きしたいと思います。日本海員組合の出身であり、全自運の生コン担当だった石井英明氏の影響があったと委員長は述べておられますが。 2.集団交渉の実現 (1)業種別部会 集団交渉を実現する前に、業種別部会が重要だったと思います。まだ運輸一般からの脱退・分裂の以前ですが、関西生コン支部は、運輸一般のなかでも業種別部会のあり方を最も忠実に実践していたと思います。 ・業種別部会について覚えておられることがあれはお話し下さい。 (集団交渉が実現していなくても、労働者が業種別に結集することは可能だし、大切だと思っていますので) (2)集団交渉の提起と実現 ◇1973年臨時大会で「集団交渉方式」を決議し、その年に実現。 ◇集団交渉への他の労働組合の参加は、どのように実現されたのでしょうか。 関生支部の強い要請だったのが、他の組合がメリットを感じたからでしょうか。 |
(3)経営者への要請、集中抗議 73年大会の別添資料で「集団交渉につくよう申入れ、合理的根拠なく拒否する企業があれば集中抗議を組織する」とし、実行されたと思います。 ◇具体的にどのような行動が展開されたのでしょうか。 ◇個別の企業ごとに企業内でやられたのでしょうか。 要請行動では支部の指導性が強かったと思いますが、東京ではまず企業単位を固めて、そして集団交渉や業種別行動に向かうべきだとする「段階論」が根強いので、お聞きしました。 (3)集団交渉・関生運動への2つの攻撃 ①運輸一般からの脱退・分裂 ◇特に共産党がおこなったが関生支部の運動路線への批判についてお話し下さい。(昨年夏のシンポの時に、まとめてお話しされた内容です) ②生コン業界と暴力団 1974年に組合員が暴力団に刺殺され、82年にも組合員が位致され、リンチにより殺害されています。委員長ご自身を含め暴力団からの攻撃について。 ◇業界の構造的な体質から暴力的な攻撃が生まれるのでしょうか。 ◇これに対する支部の強い結束力はどのようにつくられたのでしょうか。 いつか「約束は地球よりも重い」と話されましたが、組合員の成長で留意されていることをお話し下さい。 3.職種別賃金の設定 (1)職種別賃金について ・1973年春闘:大型運転手最低保障10万円を集団交渉の労働協約で確認 ・1982年:「32項目協定約束事項」に「業種別・職種別賃金体系」 職種別賃金については日本の労働運動では受容されていません。 ◇職種別賃金を提起する際に議論になった論点など。 年功賃金の擁護があったと思いますが。 ◇協約で定める生コンの職種別賃金は、標準的賃金(誰もが普通に働けば支払われる)ですか。他の組合が「産別最賃」と呼んでいる最低レベルの賃金とは違うと思いますが。 (2)共同雇用保障制度について ◇1974年に優先雇用協定を実現しましたが、その後の推移と実態についてご説明下さい。 (3)労使共同の福利厚生制度について ◇設立の趣旨など基本的なことをお教え下さい。 4.背景資本との闘争と事業協同組合 (1)背景資本の追究の意義について ◇関生支部が他の労働組合にみられない行動を徹底していると思いますが、その意義や資本の対応についてお話し下さい。 (2)事業協同組合 日本の下請構造の事業協同組合の設立を、組合が主導した例はないと思います。 その発想と確立までの困難について(現状は後でお話し下さい)。 Ⅲ、関生支部への攻撃の現局面 ◇排外主義集団を使った今の攻撃について、現状と資本の意図、反撃する組合の方向性など、自由にお話下さい。 |
http://com21.jp/archives/12758
その8 「社会的労働運動」としての連帯労組・関西地区生コン支部 〔以下の論攷は、「折々のエッセイ」「夢もなく怖れもなく 労働研究50年 熊沢誠のホームページ」欄に掲載されたものです。] http://kumazawa.main.jp/?p=434 「社会的労働運動」とはなにか 現代日本における格差社会の深化と貧困の累積に対してあまりに無力であるゆえ労働組合というものの存在意義すら問われているいま、いくつかの労働組合はようやく、特定企業の正社員≒組合員の既得権の擁護だけに汲々とするわけではない、いわゆる「社会的労働運動」論を掲げはじめている。そのこと自体は歓迎すべきことだ。だが、そのスタンスはどこまでほんものだろうか。 皮肉な言い方ながら、ナショナルセンターや単産や個別組合が組合としてのサバイバルと復権を願って、労働組合も社会全体のことを考えていますよと世間にアピールするために、闘いのプランも、身銭を切り身体を張った実践の用意もろくにないのに、広く国民生活に関わる政治・経済・社会福祉などへの革新的な取組みを組合のアジェンダに加える、そのことをもって「社会的労働運動」を標榜することもままあるように思われる。しかし「ほんもの」もある。全日本建設運輸連帯労働組合関西地区生コン支部(以下、通称「関西生コン」と略)の営みがそのひとつである。 本来、まずもって組合員が痛感するニーズに固執するほかない労働組合の営みが国民多数の生活向上と権利擁護に寄与する、すなわち偽りなき「社会的労働運動」になるには、労働組合に固有の、労働組合にしか辿れないルートというものがある。それは、労働組合が労働条件を標準化しようとする範囲を、個別企業の正社員だけではなく、競争企業・関連企業・下請企業の労働者や多様な非正規労働者たちに、執拗に広げてゆくことだ。それゆえ、例えば、みずからの傍らで働く非正規雇用者への差別や関連企業の労働者の労働条件格差を放置したままの企業別組合が、憲法9条改正や秘密保護法や原発再稼働や社会福祉の切り下げなどの反対を掲げることは、辛辣にいえば掲げないよりはましという程度の意義しかないだろう。よく誤解されることだが、本当の「社会的労働運動」の性格は、「支払能力」格差のうちに閉ざされない本来の労働組合主義の強靱な展開の延長上にこそ獲得されるのである。この前提に立って、ここに、私が「ほんもの」とみなす、関西生コンのユニークですぐれた営みを紹介したい。 関西生コン労組の独自的な組織と運動 関西生コンが「社会的労働運動」を展開できるには、もちろんそれなりの背景がある。以下に、そのいくつかをピックアップしてみよう。 世間一般にはなお未知のことかもしれないが、この組合にはまず、日本の多くの労組にはみられない組織上の特徴がある。関西生コンは、発注先のセメント会社と受注先の建設ゼネコンの中間に群生する中小企業、生コン会社で働く労働者およそ1700人を、個人加盟ではあれ、企業横断的に組織する欧米型の産業別組合である。 よくある企業別組合の連合体としての「単産」ではない。関西生コンは、建設連帯労組の「支部」ではあれ、ここでは支部が「単位組合」なのだ。それゆえ、交渉権、争議権、妥結権は企業ごとにある「分会」ではなく、支部=単組に集約されている。賃金も、80年代はじめ頃から、セメント・ローリー運転手、生コン工場の製造工、「圧送」の運転手と機械工など数種の職種別に交渉・決定されている(この職種別賃金は基本的に企業横断的ながら、最近ではいくらか企業間格差も生まれているという)。 特徴的なのは組織形態ばかりではない。関西生コンは、この点でも現在の労働界ではすでに稀なことながら、本当にストライキのできる労働組合である。一般に限界投資単位の小さい中小企業が集中する産業分野で労働組合がストライキをするのはかなりむつかしい。それができるのは、ひとつには、関西生コンが上述のような企業横断の単組という組織であり、労使関係にストはありうるというまっとうな認識をもって、収入途絶のストライカーには月30万円の生活費を保障できるような闘争積立資金の用意を怠っていないからだが、より注目すべきことに今ひとつには、この組合が労使交渉の枠組の構築にすぐれた創意を発揮してきたからにほかならない。 生コン中小企業のビジネス上の取引先は、上流がセメント会社、下流が建設ゼネコンという、いずれも価格交渉力のつよい大手企業である。この環境のもと生コン業界での企業間の価格競争が放置されれば、多くの企業の収益性は危うく、その危うさはかならずこの業界で働く労働者の労働条件へのしわよせを招く。そのビジネス環境を直視して、関西生コン労組は、業界が「構造改善事業」に指定された70年代半ば以降、上流および下流の独占大企業による関連中小企業への圧迫を抑制すべく、生コン業界がセメント会社に共同発注、ゼネコンに共同受注のできるような事業の協同組合づくりを促進したのだ。これは労働条件の直接の交渉相手である生コン会社に、賃金相場を守ることのできる「支払能力」をつけさせるという、一種の中小企業との共闘であった。その上で組合は、その協同事業体との間で、かねてから進めていた集団・統一交渉を展開して標準的な労働条件を獲得するとともに、組合の推薦する人を優先雇用させるという協定を結ぶのである。 もちろんその場合、協同事業体に属さず、ぬけがけで相場を割る低価格取引と労働条件切り下げで対応しようとする「アウト企業」が一定かならず現れるだろう。そこで組合の力量が問われる。関西生コンは、実際「アウト企業」に対して、ピケをふくむストライキやボイコットをもって報いる。その実践によって、組合組織率は約30%に留まるのに、この集団交渉の結果は、この業界の労働条件の規範となりえているのだ。日本ではほとんど例のない、ヨーロッパ型の労働協約の拡張適用がここにある。 このような営みはとはいえ、業界の製品価格設定への組合の介入を必然的にするだろう。とくにビジネスの下流、大手ゼネコンに事業協同体が供給する生コン価格を一定水準から下落しないようにさせることが、賃上げとともに当然の組合要求となる。それをめぐる大手ゼネコンとの確執が、2010年の139日に及ぶ地域(大阪、神戸)ゼネストの背景であった。数値が状況を明瞭にする。当時、生コン1立方メートルの価格は、アウト企業で8000~9000円、組合規制がさほどではない東京都内で12900円、大阪市内では、従来の協定で14800円、実勢では13200円ほどであった。この年、協同事業体と組合は18000円を要求している。そして長期闘争の結果、妥結の水準は16300円(新契約は16800円)となる。この組合は、労働条件の標準化を追求する帰結として、中小企業製品の価格維持をも闘いの視野に収めたのである。 関西生コンのこのような労働運動が、総じて高度経済成長期このかた、とくに70年代半ば以降の民間労使関係のありように高い満足を表明してきた政財界にとって許すべからざるものであったことはいうまでもない。かつて生コン業界には、労使関係のなんたるかをわきまえない無頼の経営者も少なくなかった。組合組織化の運動に対する暴力的な対応の波頭として、74年と82年には組合員が会社に雇われた暴力団の手で殺害されてもいる。一方、81年には、ヤクザならぬ日経連会長の大槻文平氏も、要旨およそ、関西生コンの運動は資本主義の根幹に関わる、こんなのは「箱根の山を越えさせない」と述べたものだ。司法の対応も偏っていた。代表的には、関西生コンの闘いにどうしても随伴するアウト企業に対するピケに対して、司法はビジネスを妨げる「威力業務妨害」適用を攻撃をかけ、ときにアウト企業からの損害賠償請求を認めさえした。正当な組合行動に対する刑事弾圧も頻繁であり、この組合はこれまで延100人以上の逮捕者を出している。 これらは先進国ではもう通用しない労働運動への文字どおりの弾圧にほかならないけれど、この日本では、横断組合による個別企業の「経営権」への介入を異常(違法!?)とすることさえまかり通っている。権力にとっては、企業横断的な産業別組合が実力をかけて中小企業の存続も視野に入れた産業政策を追求することは、二重の意味で「反社会的」なのだ。ほんらい企業の専権事項とみなされる製品価格への介入など、彼らにはもってのほかであろう。だが、現代日本の権力の側が「反社会的」とみなす労働運動こそ、まさに労働者が誇るべき「社会的労働運動」ということができる。 関西生コン労組の社会的な意義 この地点で、あらためて関西生コン労組の運動の社会的な意義を確認しておこう。 その1。ビジネス上の競争にしのぎを削る多くの中小企業と、どの企業でもその技能が通用する労働者たちが相対する分野では、労働者がひとつの横断組合に結集して企業側と労使関係を結ぶことなしには、競争に勝ちぬこうとする個別企業の労働条件の継続的なダンピングに対抗できない。その場合、団交の相手側は、それが関連企業や親企業のしめつけの下にある弱小の中小企業である場合には、組織された業界団体でなければ成功は覚束ない。それゆえ、関西生コンが協同事業体の形成に尽力して、その協同体との間の集団交渉を慣行化していることの意義はきわめて大きい。 港湾労働者は、どの先進国においても伝統的に、これと類似の労働組合と労使関係の形態を選んでいる。日本の全港湾もそうだ。関西生コン型の営みは、だから考えてみれば、実に広汎な産業の労働者に適用されるべき必要性と可能性を孕んでいる。トラック運転手、タクシードライバー、観光バス運転手など、いまは組織率も低く、中小企業間の競争の圧力が総じて過酷な労働条件に転嫁されている広義の運輸労働者には、関西生コンの労働運動はとくに大きな示唆を与えるはずである。 また例えば、もし福島の原発労働者が、いくつかの単産やナショナルセンターの働きかけで単一労組を結成でき、業界団体の結成はいまだしとしても、東電、元請・下請企業と団体交渉ができるようになれば、ものいえぬ彼らのやりきれなさはどれほど軽減されることだろう。要するに日本のユニオンリーダーはなべて、組合といえば企業別組合しかないという迷妄から脱したいものである。 その2。関西生コンの事業協同体との交渉が、製品の「適正価格」の維持に踏みこみ、ゼネコンにそれを認めさせるストライキを実行することの意義も、広く日本の労働者とってきわめて深い。その意義をさらに二点にわけて考えてみよう。 そのひとつ。現代日本では多くの下請労働者が、親企業からの受注価格の切り下げをなんとかやりすごそうとする雇用主、すなわち下請企業の、ある意味ではやむおえない労務管理によって劣悪な労働条件にあえいでいる。さしあたり下請企業の労働者もたいてい、親企業系列ごとの企業別組合しかもたないか、または未組織のままであるゆえに、ここにメスを入れるのは容易でない。だが、それゆえにこそ、中小企業の雇主が親企業に対する価格交渉力、ひいては一定の支払能力をもてるように労働組合が支援する、この関西生コン型の組合運動が模索されるべきであろう。その模索こそは、深刻な業規模間賃金格差の根因である下請構造への労働組合のもっとも真摯な鍬入れなのである。 対比させる意味でひとつの代表的な企業別組合のスタンスの紹介を試みよう。2016年春闘でトヨタ労連は「ベア3000円以上・関連企業労働者にも大幅賃上げで格差是正」を要求に掲げる。一方、会社側は14年度下期から1年ほど続けた部品メーカーに賃上げを促すための部品の仕入れ価格を据え置く対応を16年度はやめ、例年どおりの値下げ要請を再開するという。労連はこの部品単価の見直し・値下げ再開になにもいわない。勘ぐれば本体企業の業績が悪化すれば業績連動の賞与が減らされるからだ。労連関係者は言う、「部品単価は経営が考えることで、組合の範囲を超える」(朝日新聞2016.1.16)。トヨタ界隈での企業規模間格差の是正は今年も絶望的であろう。だが、これがふつうの姿なのだ。関ナマ労組の営みの際立った質の高さが知られよう。 今ひとつ。労働組合が中小企業の「適正価格」の維持に協力することの意義は、現代日本においては、下請問題を超えて、より広汎である。 「脱却」が唱えられる「デフレ」とはひっきょう、中小企業の提供する安価な製品・サービス価格と、そこで働く人びとの長時間労働や低賃金との相互補強関係を意味している。そのことを真摯に顧みれば、ともかく低価格を歓迎する消費者としての一般国民の願いは見直されるべきであろう。消費者のだれもがどこかでは働いているからだ。それゆえ、さしあたり「反国民的」とみなされようとも、労働組合運動は劣悪な労働条件と直結する低価格に奔る企業ビヘイビアを見過ごしてはならない。関西生コンの生コン適正価格維持の闘いを多くのマスコミは「逸脱」と批判したけれども、アウト企業へのピケは、労働条件の劣悪な、例えばブラック企業の製品の市民ボイコットと同じ行為であり正当なのだ。私たちは今日、低価格と劣悪な労働条件の結合が、どれほど不可欠なサービス分野からの激しい離職、観光交通や食品の安全危機を招いているか、すなわち、どれほど社会の質の劣化をもたらしているかを顧みるべきであろう。 私の印象では、雇用保障については、関西生コンの営みは、ここでも全港湾と類似のものながら、雇用安定基金による共同雇用、登録労働者の就業斡旋、収入保障を組み合わせた伝統ある全港湾の制度とくらべると、なおシステム化は遅れ、不安定なように見受けられる。この点の充実が今後の課題であるように思われる。とはいえ、全体として、これほどのなかま意識と創意をもって、ともすれば使い捨てられかねない中小企業のブルーカラー労働者の界隈に、定着できる居場所としての労働組合を構築しえたことに、私は深い感銘を禁じえない。関西生コンの実在は、長らく労働研究を続けてきた私には、日本の労働組合運動への絶望を見直させるたしかな希望である。 注:『関西地区生コン支部 労働運動50年──その闘いの軌跡』(社会評論社、2015年)所収。HPへの転載にあたってわずかに加筆・修正した。 カテゴリー: 折々のエッセイ 作成者: union5 パーマリンク ◆折々のエッセイ 主として労働、社会、政治、生活に関する評論や個人的な回顧を、報道や書物を参照しながら、硬軟さまざまに綴っています。 その1 残業代ゼロ法案の欺瞞:ホワイトカラー・エクゼンプションへの「トロイ」の馬(2015年2月) その2 いつまでも映画ファン:2014年のマイベストと今冬の感銘(2015年3月) その3 『家族という病』の耐えられない軽さ(2015年6月) その4 過労死・過労自殺の重層的要因と労働者の主体性(2015年9月) その5 情勢論(1):15年秋の闘い、統制と自粛の季節へ(2015年11月) その6 情勢論(2):日常の界隈に働く強力な同調圧力(2015年11月) その7 去年今年:「ザッツ ニッポン!」それでもなお(2016年1月) その8 「社会的労働運動」としての関西地区生コン支部(2016年2月) その9 「同一労働同一賃金」――その日本的なハードルを超えて2016年5月) その10 2016年秋の憂鬱2016年9月15日) その11 賀状の心象風景(2016年11月7日) その12 関西電力課長の過労自殺をめぐって(2017年2月16日) |
『関西地区生コン支部労働運動50年-その闘いの軌跡 共生・協同を求めて1965~2015 他人の痛みを己の痛みとする関生労働運動 』 出版:全日本建設運輸連帯労働組合関西地区生コン支部、「関西地区生コン支部50年誌」編纂委員会編、発売:社会評論社、本体3500円+税、2015年7月 |
『関西生コン産業60年の歩み
1953~2013 大企業との対等取引をめざして協同組合と労働組合の挑戦』、中小企業組合総合研究所編、社会評論社、3500円+税、2013年9月18日、A5判上製
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『建設独占を揺がした139日―関西生コン闘争が切り拓く労働運動の新しい波』 木下武男・丸山茂樹樹著、変革のアソシエ、2011年4月 |
『新時代の希望を語る 武建一対談集2』 武建一ほか/著、 出版元: 社会批評社、 四六判、本体1000円 +税、 2011年2月 |
『時代の求めにこたえて武建一対談集』 新崎盛暉・組坂繁之・本山美彦・武建一著、社会批評社、四六判、本体1000円+税、2010年1月 |
『武建一 労働者の未来を語る 人の痛みを己の痛みとする関生労働運動の実践』 社会批評社、2007年10月 |
『告発!逮捕劇の深層 生コン中小企業運動の新たな挑戦』 安田浩一著、社会批評社、本体1800円+税、2005年10月 |
http://www.kannama.com/index.html
http://www.kannama.com/ichiran.htm
http://www.kannama.com/kusari/kusari_2018.html
http://www.kannama.com/news/news2010/10.5.22/syoseki.html
http://e-kyodo.sakura.ne.jp/kinoshita/140714kannsai_2.pdf
◆更新(2017.11.18) ◇【youtubeで発信】大阪労働学校アソシエ・特別シンポジウム―連続講座「労働運動の歴史に学ぶ」開講に際して―パネルディスカッション、武建一委員長も参加(2017/09/24 に公開) (画面をクリックするとyoutubeで観られます) ◇【youtubeで発信】大阪労働学校アソシエ・特別シンポジウム―連続講座「労働運動の歴史に学ぶ」開講に際して―木下武男基調講演と熊沢誠講演(2017/09/24 に公開) (画面をクリックするとyoutubeで観られます) 労働運動再生への灯火 歴史に学び「関西」から全国へ世界へ!! 新しいユニオン運動への萌芽 木下武男講師 当面の運動課題として、1)日本労働運動の再生、2)生活と雇用の新システム構築をあげ、特に貧困と賃金下落を招いた要因に80年代以降の労働組合の衰退・弱体化と春闘の機能不全を挙げた。これらを克服する新しい枠組みとして「業種、職種、業界を柱にする労働組合」の広範な連携を訴えた。 「ユニオン運動は、関西における生コンの労働運動方式といえる。企業内組合ではなく、個人加盟組織としての産業別ユニオン運動であるから、企業の枠にとらわれない業界の健全化と労働条件の向上、別業種との連携が図れる」とモデル組織が既に、この関西には歴史的に強固に存在すると紹介。 「東京でも武委員長と話した若い活動家が〝関西生コン方式〟のユニオン運動に大きな刺激を受け、新しい〝うねり〟を創り出している。皆さんの協力を得ながら新しい運動を作っていきたい」と新しいユニオン運動への期待を語った。 労働者を救うのは労働組合以外あり得ない 熊沢誠講師 続いて熊沢講師は、資本主義が強いる労働者間の競争抑制を訴え、「このままでは労働組合運動は不戦敗になるに違いない。安倍首相の唱える〝働き方改悪〟が近く法案化されるだろう」と語り、さらに「連合」の例を挙げて労働組合批判をするものの、「それでも労働者を救うのは労働組合であるというのが私の信条であり、進みゆく格差社会にブレーキをかけるのは労働組合運動しかない」と持論を展開し<労働組合運動の再生>を軸にする運動の再確認を求め、行動を促す講演を行った。 その大要は、1)平等を通じての生活と権利の保障、2)賃金を平準化するルールの明確化などである。しかし現代日本では「競争と選別の工程」が定着し、「日本的能力主義が新自由主義的政策を背景に浸透してしまった」と時代経過とともに説明。さらに、「ボロボロになるまで働いて、うつ状態になっても自分の責任という。一般的な労働組合に駆け込んでも、〝それは上司とあなたの問題〟といわれる。労働組合すら個人の受難を見つめることから撤退してしまった」と、労働組合へ厳しい批判を表明した。 「労働組合運動そのものへの期待が無くなっているこの時代、関西の生コン労働運動の画期的な闘いに学び、日本労働運動再生の契機を探ること。原点である労働者同士の助け合いや競争制限には、それでも労働組合が不可欠であることをここに再認識し10月からの講座では具体例を挙げて講義したい」と語った。 今後の課題と展望-多様な結集機軸作れ パネルディスカッション 続くパネルディスカッションで武建一代表理事は、「私たちの労働組合が誕生したときは、正に奴隷的な労働条件であった。我々は発足当初から徹底して労働者間の格差を無くす努力をし、経済闘争、政治闘争、さらに労働組合支部での定位的な学習を通じて、大衆性と階級的意識との統一に尽力してきた。常に労働者側観点に立ち、学習と実践を両立させ今日があるという自負を持っている。共闘する労働組合と友誼的な関係構築に努力し、産業的な成果から協同化を発展させて来た。生コンだけではなくあらゆる職種、産業に対応するユニオンとして努力の半ばにある」と力説した。 木下講師は個人加盟ユニオンの問題点を、「何を結集軸にするか。業種や職種がこれまでのユニオンにはなかった。それがあまり前進しえない要素の一つとして再確認出来た。労働運動そのものも団塊の世代がリタイアすると維持が難しくなっている現状を迎えようとしている。それは、結集を促す核となり売る機軸がないからだ。やはり業種、職種、地域、企業あるいは階層といった多様な結集機軸を作らないと、個人ユニオンも今後とも安定しないだろうと」と分析した。 熊沢講師は、現在の労働組合の問題点を「結集する年齢層が高いことが心配だ。メーデーに行っても知った顔ばかりで、若い世代が見当たらない」と嘆き「82年に中曽根政権が発足し、その年から私鉄総連や公労協が戦後初めてストなしの春闘に入った。その頃から、賃金とは闘いではなくて経済の情勢によって持続的に決まるという考え方が労働組合にも広がった」と、闘わない労働組合の不振の始まりを語った。 [出所]以下のページです ◆更新(2017.08.30) ◆200名余の参加で、開かれました(2017.08.28) |
編集人:飯島信吾 ブログ:ある編集者のブログ 企画・制作:インターネット事業団のホームページ 現代労働組合研究会のホームページ インターネット事業団(本メールにご連絡ください) UP 2020年07月30日 更新 2020年07月30日 |
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